日本国籍の取得方法(帰化の条件)
日本国籍を取得するには?
外国籍の方が日本国籍を取得するときに行う申請を「帰化申請」と言います。
ただし、帰化申請をすれば必ず日本国籍を取得できるのかというと、そうではありません。
日本に何年住んでいるか、犯罪歴等はないか、収入はどれくらいあるかなど、たくさんのハードルがあります。
- 条件を満たしているのか不安がある
- 手続きが複雑と感じる
- 確実に成功させたい
上記に当てはまる方は、専門家である行政書士に相談することをお勧めします。
行政書士にもそれぞれ専門分野はございますが、行政書士アルバーズ法務事務所は帰化申請専門の行政書士事務所です。
帰化とは
帰化とは、元々の国籍を喪失して日本国籍を取得することです。つまり、日本人になることを意味します。
人一人の国籍が変わることは、重大なことです。
そのため、帰化申請の準備や審査はそう簡単ではありません。
日本国籍の取得を検討している方は、まず自分が帰化の条件を満たしているかどうかを必ず確認しましょう。
帰化の7つの条件
帰化の条件は、国籍法第5条の第1項に定められています。
以下の7つの条件を全て満たしていなければ、帰化申請は不許可となってしまいます。
それでは、一つ一つ解説していきます。
① 住居要件
国籍法第5条第1項第1号では「引き続き5年以上日本に住所を有すること」とされています。
ただし、単純に5年以上日本に住んでいるだけで住居要件を満たすとは言えないので注意が必要です。
(1)引き続きとは? 出国日数に注意
条文にある「引き続き」とは、一定日数以上の出国がなく継続して日本にいることをいいます。
逆に言うと、日本に5年以上住んでいても、直近5年のうち日本にいない期間が長いと帰化申請ができないということです。
帰化申請が受理された後の審査期間中も同様で、出国日数が長いと不許可となる可能性がありますので、注意しましょう。
不許可となる出国日数の例 |
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・1回の出国で連続3か月以上日本を離れていた ・年間でおよそ合計100日以上日本から出国していた |
上記に該当する場合、それまで日本に住んでいた日数はリセットされ、改めて0日から数え直しとなるようです。
頻繁に仕事で海外へ行くことや里帰り出産のため母国へ長期間帰省するなどの場合は、出国日数に細心の注意が必要です。
(2)5年間のうち3年以上の就労期間が必要
住居要件でもう一つ重要なのが就労期間です。
一見すると条文に就労という記載はありませんが、「日本に住所を有すること」の「住所」の定義を満たすために就労期間が重要です。
民法22条では「生活の本拠」を「住所」としています。
そして、帰化申請の審査では、その方に「生活の本拠」がある(=住所を有する)とみなす客観的な事実として「就労系の資格を持ち少なくとも3年以上は就労していること」という解釈があると考えられています。
つまり、日本に継続して居住している直近5年間のうち3年以上の就労期間があれば住所があるとみなされ住居要件を満たすことができます。
就労していると認められる雇用形態の例 | |
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OK
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正社員、契約社員、派遣社員などの雇用形態 (就労可能な在留資格を取得している) |
NG
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無職やパート、アルバイト、留学や技能実習 (就労資格を取得していない) |
なお、居住資格「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」を取得している方は、就労期間が無くても日本に引き続き5年以上住んでいれば住居要件を満たします。
留学のため来日してから帰化が許可されるまでのスケジュール例 |
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2010年4月 大学入学 2014年3月 大学卒業 2014年4月 大学院入学 2016年3月 大学院修了 2016年4月 就職(就労系の在留資格取得) 2019年4月 就職して3年経過、帰化許可申請 2020年4月 帰化許可 |
現在の在留期間に注意??
2023年からビザの在留期間が1年以下の場合、帰化申請を受け付けてもらえなくなりました。
過去のビザで在留期間が3年以上であったとしても、現在お持ちのビザの在留期間で判断されるため注意しましょう。
(例:前に「家族滞在」で在留期間が3年のビザをもっていたが、現在は「日本人の配偶者等」で在留期間が1年のビザだと、帰化申請はできない)
そのため、現在の在留資格が3年もしくは5年になってから帰化申請をしましょう。
② 能力要件
国籍法第5条第1項第2号では「18歳以上で本国法によって行為能力を有すること」とされています。
言い換えると、申請人ご本人の年齢が18歳以上であるかどうかです。
ただし、外国籍の未成年者が親と一緒に帰化申請をする場合は、この限りではありません。
(1)国ごとの成人年齢に注意
条文の「本国法によって行為能力を有すること」とは、その国の法律によって定められた成人年齢に達していることをいいます。
つまり、元の国籍の国でも成人している必要があります。
成人と認められる年齢(2024年6月時点) | |
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日本 | 18歳 |
韓国 | 19歳 |
中国 | 18歳 |
タイ | 20歳 |
ベトナム | 18歳 |
参照:諸外国における成年年齢等の調査結果 – 法務省より一部抜粋
日本の成人年齢は18歳のため、18歳までは単独で帰化ができません。
また、韓国籍の方の場合、本国での成人年齢が19歳のため、19歳になるまで待たなければ帰化ができません。
(2)行為能力とは 精神的障害がある場合は帰化ができない?
条文の「行為能力を有している」とは、成人していて契約などの法律行為を自分自身で判断して行うことができる状態をいいます。
つまり、本人が帰化について十分に理解していて、正常な判断能力をもった上で自らが「帰化したい」という意思を示せるかが重要です。
逆に、「行為能力を有していない(=未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人)」制限行為能力者は、その保護者(=法定代理人、成年後見人、保佐人、補助人)の同意がなければ、法律行為はできないとされ、帰化申請ができません。
他にも、精神的障害(認知症、知的障害、精神障害)がかなり重度である場合、帰化許可が難しい可能性があります。
しかし、帰化や国籍が変わることについて、本人が理解した上で帰化の意思を示すことができれば、精神的障害があっても帰化をすることは可能です。
③ 素行要件
国籍法第5条第1項第3号では「素行が善良であること」とされています。
「素行が善良」とは、犯罪歴の有無や納税状況、本人の態度、社会への迷惑の有無などから総合的に判断されます。
基準の明確化はされてませんが、今までに一度でも違反があると絶対にNGというわけではなく、違反の程度や回数、悪質性などが考慮されます。
素行が不良と判断され不許可となる例 |
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(1)税金を納めていない(確定申告忘れや滞納など) (2)国民健康保険・国民年金に未加入、未払いがある (3)直近5年で5回以上の軽微な交通違反がある (4)前科・犯罪歴があり、一定以上の年数が経過していない |
(1)税金を納めていない(確定申告忘れや滞納など)
税金(所得税、事業税、住民税など)を滞納している場合は、速やかに支払いましょう。
また、申請者本人だけではなく、同居の家族全員も漏れなく納税していなければ、帰化が不許可になります。
ただし、過去に未納があったとしても、帰化申請前までに完納していれば問題ありません。
なお、会社員の方で、所得税は給与から源泉徴収。しかし、住民税は各自で支払う。とする会社もあるようです。
その場合は、住民税の支払い漏れがないように注意しましょう。
経営者の方は、個人分の納税証明書の他に、会社分の納税証明書が必要です。
(2)国民健康保険・国民年金に未加入、未払いがある
外国籍の方にも国民健康保険・国民年金の加入義務があるため、保険料・年金の支払いも重要です。
加入漏れや未払いがないように注意しましょう。
支払い漏れがある場合は、速やかに支払い、帰化申請前の直近2年分の領収書を提出できるようにしましょう。
なお、会社員等で会社の社会保険に加入している方は、保険+厚生年金の支払いがまとめてされているため、心配ありません。
(3)直近5年で5回以上の軽微な交通違反がある
帰化申請前の直近5年で、軽微な交通違反(シートベルトの装着義務違反、一時不停止、駐車違反など)が5回以上ある場合、素行が不良とみなされ帰化申請ができません。
なお、帰化の審査は年々厳しくなっているため、2023年以降では直近2年で3回以上の違反がある場合、不許可となる可能性が高いようです。
また、重大な違反(著しいスピード違反や飲酒運転など)は、1度だけでも不許可となるリスクが非常に高いです。
しかし、免許停止から3年以上経過していれば、帰化申請を受け付けてもらえる可能性もあるようです。
(4)前科・犯罪歴があり、一定以上の年数が経過していない
前科や犯罪歴がある場合、素行が不良とみなされる可能性があります。
なお、犯罪の動機、内容、年齢、刑期終了後の素行状況によって異なりますが、一定以上の年数が経過していれば許可される場合があるようです。
実刑有罪判決の場合 |
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刑の執行を終えてから10年以上経過している |
執行猶予付き有罪判決の場合 |
執行猶予期間の2倍程度の期間が経過している (例:執行猶予3年の場合、刑の執行猶予の言い渡しを取り消されることなく猶予期間を経過しており、執行猶予の言い渡しされたときから6年以上経過していること) |
オーバーステイ(在留期間経過後の不法残留)の場合 |
オーバーステイ後、在留特別許可により在留資格が付与されてから10年以上経過している |
上記のいずれについても、実務上の一例であり本人の状況によって異なるため、事前に法務局へ相談するべき内容となります。
④ 生計要件
国籍法第5条第1項第4号では「自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること」とされています。
つまり、自分や家族・親族の収入や資産によって、日本で経済的に問題なく生活することができるかが重要です。
申請人ご本人に十分な収入がなかったとしても問題ありません。
それは、同居の家族(配偶者や成人した子)や金銭面で支援をしてくれる親族に十分な収入があり、世帯として生計が維持できれば、経済的に困窮して犯罪を犯してしまったり、生活保護を受給して日本の福祉を圧迫したりする可能性が低いと考えられているためです。
なお、日本で就労可能な在留資格を有している場合、基本的には生計要件を満たしていると判断されるようです。
生計が維持できると判断される基準例 |
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(1)正社員であること、もしくは契約社員、派遣社員でも勤務期間が長いこと (2)収入が少ない家族を扶養していても、十分な世帯収入があること (3)無職で収入がなくても、経済的に問題なく日本で暮らせることが証明できること (4)過去に破産していても、破産手続き開始決定日から7年以上経過していること |
(1)正社員であること、もしくは契約社員、派遣社員でも勤務期間が長いこと
派遣社員であっても同一派遣先で3年以上勤務していた方が許可されたケースがあります。
なお、収入の目安は月々の手取り額だと18万円、年収250〜300万円程といわれています。
また、貯金がなくても、毎月の安定した収入があれば問題ありません。
(2)収入が少ない家族を扶養していても、十分な世帯収入があること
一人暮らしであれば、手取り18万円程度で十分ですが、扶養している家族の状況によって異なります。
生計要件は世帯単位で判断されるため、専業主婦や学生などで収入が少ない人を扶養している場合、扶養家族が多ければ多いほど世帯収入も多くなければなりません。
具体的な世帯収入は明確化されておりませんが、毎月の家賃・家族の生活費等と世帯収入を比べたとき、収入がある程度上回っていれば問題ありません。
(3)無職で収入がなくても、経済的に問題なく日本で暮らせることが証明できること
申請人ご本人が無職であっても、家族や親族などからの経済的な支援、または、本人に十分な資産・年金収入などがあれば、生計要件を満たすと判断されます。
なお、家族や親族などからの経済的な支援がなく、失業中・年金生活者である方は、貯金額が問題となることがあります。
経済的な支援がなく貯金額が問題となるケース | |
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失業中の方
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求職期間中の生活を維持するだけの貯金額がある場合は問題ありません。 その際は再就職ができるスキルがあるかどうかも審査対象になるようです。 |
年金生活者
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貯金額に加えて年金収入も加味されます。 |
(4)過去に破産していても、破産手続き開始決定日から7年以上経過していること
借金やローンがあっても、滞納や返済の遅延がなければ不許可とはなりません。
ただし、収入に対して借入が多すぎるなど、収支のバランスが合っていない場合は不許可となる可能性があります。
⑤ 重国籍防止要件
国籍法第5条第1項第5号では「国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によってその国籍を失うべきこと」とされています。
つまり、外国人が日本国籍を取得する場合、前もって元の国籍を喪失して無国籍である、もしくは帰化の手続きと同時に元の国籍を喪失する必要があります。
日本では複数の国籍をもつことは認められていない
海外では、複数の国籍を同時に持つことが認められている場合がありますが、日本では、基本的に二重国籍(多重国籍)が認められていません。
例えば、日本人と外国人の間に子どもが生まれて、二重国籍となっていた場合は、20歳になるまでにどちらの国籍になるかを選択しなければいけません。
国籍を選択しないまま一定期間を経過した場合、日本国籍を失うこととなります。
ただし、例外として、本人の意思によって元の国籍を喪失できず、日本人との親族関係があるなど、特別な事情があると認められる場合は、喪失要件を満たしているとみなされ、帰化が許可となる可能性があります。
⑥ 思想要件
国籍法第5条第1項第6号では「日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと」とされています。
つまり、日本政府の破壊を企てる、主張する、もしくはそのような暴力団やテロリスト集団を結成、加入する可能性がある人は日本国籍の取得ができないということです。
この条件は本人だけではなく、同居している家族・親族、もしくは親しく付き合っている方がいた場合も厳しく審査されます。
また、経営者の方は、会社の役員や取引先の方が反社会勢力などの団体と関わっているかどうかも審査対象となるため注意が必要です。
仮に、過去そのような団体と関わりがあったとしても脱退済である場合は、脱退した時期や現在は確実にメンバーではないという証拠の証明が必要です。
⑦ 日本語能力
上記の6つの条件とは違い、日本語能力の有無は国籍法に明記されていませんが、帰化の条件としてある程度の日本語能力が求められています。
といっても、日本の小学校3年生程度の日本語能力があれば問題ありません。
しかし、日本語能力に不安があると判断された場合には、日本語能力テストが行われることがあります。
審査期間中に、審査官との面談がありますので、そのときには日本語を流暢に話せるようにしておきましょう。
また、申請書類の中にある「帰化の動機書」からも、日本語能力を判断されます。
「帰化の動機書」は、特別永住者以外の方が帰化申請をする場合に必要な書類のため、なぜ日本国籍が必要なのか、日本国籍を取得してどうしたいのか、を十分に説明できる能力を備えておきましょう。
当事務所では、申請人ご本人の状況をお聞きして「帰化の動機書」の文章作成をサポートいたしますので、日本語で長い文章を書くことが苦手という方もご安心ください。
最後に
帰化の条件は7つあり、すべて満たしていなければ、帰化申請が不許可となるか、申請を受理してもらえません。
逆に言えば、すべて満たせば問題なく許可されます。
条件を満たすことの証明は、出身国や日本国内から様々な書類を収集し、状況に合わせて一つ一つ書類を作成するという非常に手間と時間がかかるものです。
人によっては、提出書類が100枚以上になることもあります。
それほど、国籍が変わるということは、重大なことなのです。
それゆえに、帰化をして日本国籍を取得することにより得られる権利もとても大きいです。
- これから生まれてくる子どもが日本国籍を得られる
- 在留資格の心配がいらない
- 日本の戸籍を持ち夫婦で同じ戸籍に入ることができる
- 法律の扱いが日本人となる
- 選挙権を得られる など
何をメリットと感じるかは人それぞれですが、ここまでお読みいただけたということは、少なからず変化を求めているのかと思います。
どんな小さなお悩みでも構いませんので、帰化申請の専門家である行政書士へご相談することをおすすめします。
帰化の専門家であれば、今までの豊富な経験からお悩みを解決、申請についても書類準備や全体の流れ、スケジュール、面談の準備などをスムーズにサポートすることができます。
まずはお気軽にご相談ください。
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あなたの帰化申請のお力になれれば幸いです。